株式会社田代コンサルティング(社労士)-田代英治さん

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「社労士で起業」独立初年度から年商1300万円達成!

1日3000 アクセスの実録系ブログが独立の後押しをしてくれた
週末起業から独立へのタイミングは、一体いつが妥当なのか悩んだことはありませんか? 社会保険労務士で独立を果たした田代英治さんは、自らの体験記を書き連ねた、実録系ブログ「人事労務屋のつぶやき」のおかげで、独立できたといいます。どうして、ブログで独立することできたのでしょうか。

最初は社労士で独立するなんて考えられなかったとお伺いしましたが?
私は、神戸で学生生活を送ったので、土地柄、海外や異文化に憧れて、就職したのが商社や小売店などの輸送時の運送代行をする海運会社だったのです。将来は海外の駐在員として、憧れていた理想の生活をする、と夢を抱いていました。今、こうして社労士として独立するに至るとは、本当に夢にも思っていませんでしたね(笑)。

では、社労士に興味をもったきっかけとなったのはどんな出来事なのでしょう?
大卒で初めて配属された先が営業部。ちょうど30歳の1993年に人事異動の話が来たのです。このときは「いよいよ海外駐在か!」と期待を胸に膨らませて喜んでいました(笑)。

ところが、実際に辞令を受け取ってみると、人事部への配属命令だったのです。これには愕然としました。なぜならば、期待していた部署へいけないという残念の気持ちよりも、今まで営業部で培ってきた8年の経験が全く役に立たないということに非常に焦りを感じていたからです。

案の定、配属されてから1年半ぐらいは仕事ができないお荷物状態になってしまいました。自分のやりたい仕事ではないし、仕事もうまくこなせない......。営業部の第一線でバリバリやっていた頃の自信を完全に失って、苦しい日々が続きました。

ところが、あるときに、自分が仕事で苦しんでいるのは、自分に労務管理部門の知識がないからだと思い始めたんです。そこで、人事関係で何か資格を取れば、昔の自信を取り戻せるだろうと。そこで考えたのが社労士の資格でした。

そこから何をまず始めたのでしょうか?
社労士の資格を取ろうと目標を立てたのが95年です。当初は、専門学校に通おうと考えていましたが、勤務時間終了後の受講の時間に間に合わないのです。

そこで、最初の半年ぐらいは通信講座で行い、後は独学で勉強することにしました。通勤の電車の中で勉強したり、朝は7時に出社し、始業時間の9時まで資格の勉強に当てたり、週末を資格の勉強時間に当てていました。おかげで97年には資格取得することができました。

そして、その資格で週末起業を考えたのですか?
いいえ。違います。週末起業を考え始めたのは、97年に船舶の運航管理をする部署に人事異動になったときです。船舶の運行管理とは、今年4月に東京湾で貨物船同士の衝突事故がありましたけれども、ああいう海難事故が起きたときに、会社としてどういう対応をするかを一番最初に、考える部署なんです。

ところが事故なんていつ起こるかわからないわけですから、24 時間、365日、非常に緊張にさらされてしまうハードな仕事です。人事部への配属のときには、自分に力がないと思って、社労士の資格を一生懸命取りました。おかげで、仕事も高く評価されるようになり、自分の違う一面を発見できたことで、以前の自信を取り戻すことができたのです。そのときは会社に感謝したこともありました。

しかし、このときの人事異動で、会社に勤務している以上、人事異動からは逃れられないことを再認識しました。そこで、本当に自分のやりたいことは何かを真剣に考えたときに「人」に関わる仕事がやりたいと思ったのです。そこからは様々なところに社外人脈を広げて、いろんな人と話しているうちに、社労士で独立できるかもしれないという気持ちになってきたのです。週末起業フォーラムに参加したのもこの頃です。

週末起業フォーラムではどんなことが勉強になりましたか?
週末起業フォーラムには、ブログコンサルタントの中野てるひこさんを始めとして、ブログやメルマガで起業している人が多くいらっしゃいました。今まで、パソコンはインターネットとメールぐらいしか利用していなかったので、非常に勉強になりましたね。

そこで、自分も軽い気持ちで「人事労務屋のつぶやき」というブログを始めることにしたのです。内容は、教科書的な人事労務の考え方ではなく、現場で起きた問題を現実的な方法で解決した顛末をケーススタディとしてブログに書きました。たとえば、以前、社内の人間関係のトラブルで相談を受けたことがありました。教科書的には、会社は私的行為には介入しませんが、実際に業務に支障を来たしているわけですから、私は人事労務の問題として真正面から向き合うことにしました。

当人同士の気持ちをいかに整理させるか重要だと思った私は、双方を呼び出し、仲介して話し合いを設けたりしました。最終的には一方が異動することになったのですけれど、きちんと処理をしたおかげで、当人たちは、気持ちの整理がついたと感謝してくれました。

社労士の仕事というのは、労働基準法などの関係法規に血を通わせる仕事なので、運用実例が非常に重要になってきます。人事労務の現場を見せるというネタは、実録系ブログにピッタリのネタだったわけです。その結果、アクセス数は1日に2000~3000に到達!週末起業家としての、実際の収入はありませんでしたが、対外的に自分の仕事が認められていると自信がつき、2004年夏に、独立の意向を上司に伝えたのです。

サラリーマンから社労士として独立。当初は仕事がなくて大変だったのではないですか?
それが全く問題ありませんでした(笑)。上司に独立の話をしたときに、慰留されるか、突き放されるかどちらかだと思ったのですが、意外なことに、会社の人事労務も業務委託で受けて欲しいと、申し出があったのです。

私は「人」に関わる仕事が大好きで、それこそ趣味のように寝る間を惜しんで、会社の人事労務に多くの時間を費やしてきました。気がついてみると、「どんな相談にも嫌な顔せずに、解決する人事労務マン」としての自分ブランドが確立されていたようです(笑)。そのおかげで、ブログも大好評。仕事のほうも頼りになる顧客を獲得することが可能になりました。

独立初年度の売上はいくらになりましたか?
独立初年度の売上額は約年商1300万円。サラリーマン時代でもらっていた年収とほぼ同額です。そのような年商を達成できたのも、実はブログによるところが大きいのです。一番大きいのが、自分に合った仕事やお客さんが来るということですね。会社員時代は、何でもやらなくてはならかなったのですが、独立して、ブログで自分の仕事のスタンスや考え方を表明してからは、そういうことがなくなりました。

また、ブログで書き続けたネタから、『労政時報』などの有名な業界専門誌から執筆のオファーがありました。さらに、その業界専門誌に書いたことで、講演の依頼が来たりして、いい循環を作ることができました。それで前述の年商を達成することが可能になりました。

開業資金はどのくらいでしたか?
独立のために用意した資金は約100万円。事務所は霞ヶ関にフリーアドレスの貸事務所を借りることにしました。家賃は月に5万円です。会社からの人事労務の業務委託を受けていた関係で、独立資金にはさほど手をつけずに済みました。

週末起業で頑張っていらっしゃる人に一言
「遠慮は貧乏人のはじまり」という言葉があります。週末起業を始めるにしろ、ブログを始めるにしろ、色々とリスクを考えすぎて動けないことがあります。しかし、何をやるのでもリスクはつき物。まずは、リスクを許容するという態度で、いろんなことにチャレンジしてみる姿勢が大事だと思います。