かつらWith(かつらネット販売)-宮崎弥生さん

かつらWith(かつらネット販売)-宮崎弥生さん

全国の理容店と組んで、「ネット」と「リアル」を見事に連携

かつらの市場価格は、それなりに高いもの。あまり知られていないことですが、これはテレビCMの宣伝コストが上乗せされるためだとか。しかもほぼ3年ごとに買い替えなければならず、生涯コストがスポーツカー並みに跳ね上がってしまうケースもあるといいます。有限会社Withの代表、宮崎弥生さんは、インターネットでかつらを販売。宣伝費をかけず、低価格の商品を実現することに成功しましています。ホームページ制作のかたわら始めたという週末起業の、サクセスストーリーを伺いました!

週末起業家成功事例

業務内容についてお教えください
かつらのインターネット販売をおこなっています。人目を気にせず、ネット上で商品が注文できるだけではありません。当社製品の最大の特徴は、低価格ながら、大手メーカー並みの品質を維持していること。

ご存知ですか?かつらの市場価格は、大手メーカーの場合で大体、40~100万円もするんですよ。その他の中小メーカーや理髪店だと、20~40万円といったところでしょうか。

その点、当社の商品は標準タイプで14万8000円と16万8000円のツープライス。大手企業と同じ、中国の工場で生産していますので、まったく遜色ない出来栄えのものをご提供できます。

低価格商品が実現できたのはなぜでしょうか?
ご存知のように、かつらというものは、口コミや営業が難しい商品です。「このかつら、よくできてるだろう」と自慢する人は滅多にいるものではありませんよね。「もしやあなた、かつらがお入用では?」などと勧誘することもできません。

つまり、テレビCMなどで宣伝しない限り、新規顧客の獲得は難しいんです。そんな事情から、現在、かつら市場は資金力のある大手メーカー2社の独壇場となっています。ただ、その宣伝コストはかつらの価格に上乗せされているんですよ。ですが、インターネットを使えば、宣伝費用はほとんどかかりません。したがって、適正価格の商品を販売することが可能なのです。

販売の仕組みはどのようなものですか?
お客様にインターネットで発注していただいたら、当社と契約する全国の理容店12店舗の中から、最寄りの店に来ていただきます。そこで頭の型取りなどをおこなうわけです。型取りしたデータは、理容店から当社へ。そして、当社から中国の生産工場へ発注をおこないます。仕上がりまでおよそ40日間。アフタフォローなどは理容店が担当します。

理容店とタイアップすることによって、ひとりひとりに合った、きめ細かなサービスが可能。お客様の信頼を得ることができますし、何より安心していただけますよね。また、大手メーカーの代理店は、駅前の一等地にあるのがつねですが、おそらくテナント料はバカにならない額でしょう。

わたしどもの場合はこうしたコストも必要ありません。この手の余計な費用をかけないことも、低価格維持につながっているのです。

商品の特徴をお教えいただけますか?
第一に、すべて人毛ですので、風合いが非常に自然です。また、ベースとなるネットはかなり軽いものを使用していますので、使用感も快適ですよ。さらに当社では、地毛とカツラをピンで止める「ピン止め式」を取り入れています。理由は、メンテナンス上、このほうが断然、都合がよいからです。

夜、寝ているときは、かつらをはずさないと、髪や地肌を痛めてしまい、その部分が早期に抜けやすくなりますからね。かつらにしろ、地毛にしろ、ピン止めのほうが長持ちするというわけです。

おすすめ商品としては、生え際を自然に見せる「フロントマジック」があります。30センチまで近づいても目立たず、バックスタイルや、前髪を流すスタイルなど思いのままですよ。円形脱毛症、抗がん治療、やけどや交通事故などに対応する医療用かつらもあります。

販促活動はどのようにされていますか?
もっぱらインターネットでおこないます。おもにアフィリエイトに頼っていますね。また、相談などのメールにはできる限り、丁寧にお答えするようにしています。何度もやりとりを繰り返すうち、「メル友」になってしまい、お電話を頂いたり、当社まで遊びに来ていただいたりすることもあります。

アイデアを思いついたきっかけは?
もともと、SOHOでホームページ制作をしていました。大手通信企業を退職したのち、米国留学を経て、プロバイダー会社に就職していたのですが、祖母の病気をきっかけに、独立したのです。在宅で看護する必要があったものですから。

ところが、事業はさっぱり泣かず飛ばず。切羽詰って、あちこちの起業セミナーや異業種交流会に参加していました。そんなとき知り合った男性から、かつらがどれほど高くつくか、という話を聞いたのです。それでぴんときました。「インターネットを使えば、もっと安く提供できるはずだ」と。

すぐに業界の現状をつぶさに調べ、事情通の理容店チェーン経営者から詳しい話を聞きました。彼は大手のやり方に疑問を感じ、中国の生産工場を訪問して、すでに生産契約を取り交わしていたのです。

結局、かつらを使っていた男性、理容店チェーン経営者とともに事業を立ち上げ、ホームページ制作のかたわら、販売を開始することにしました。

当初から売上は好調でしたか?
いいえ、最初は月間2、3件といったところでした。風向きが変わってきたのは、4、5ヶ月目のことです。じょじょに評判が広まってきたのでしょう。「口コミが効かない商材」とはいっても、インターネットの世界では、まったく事情が違います。

「安いうえに、品質もよい」という情報があちこちの掲示板で流れ、どんどん問い合わせが入り始めたのです。嬉しかったですね。自分が想像していた通りの手ごたえがあったのですから。

会社を立ち上げたのはいつですか?
しばらくは、「あみネット」という名称で営業していましたが、2002年1月に「有限会社ウィズ」を設立しました。会社組織にしたおかげで、多少のことがあってもへこたれなくなりました。社員に給与を払わなくては、と思うとめげてはいられません。責任のない立場にいたら、ひょっとすると挫折していたかもしれませんね。

現在の売上はいかがですか?
お客様には大変お喜びいただいていますよ。なにせ、かつらの耐久年数は約3年。その都度、買い換えなくてはならないのです。よく匿名の相談メールを頂くのですが、なかには「これまでに1000万円近く散財した」と打ち明ける方もいるくらいです。

高級スポーツカー並みというわけですね。まったく同じ品質の商品が、これほど低価格でできると知ると、最初は皆さん、かなりショックを受けられるようですが......。おかげさまで2000年8月の発売開始以来、購入客数はのべ1000人超。年商は約7000万円です。

今後の展望をお教えください
じつはあまり大それた野心は抱いていないんです。正業――正しい商い――を続けていければ、それでいいと思っています。当たり前のことをやって、お客さんと理容店、社員、それに私がハッピーになれる。こんな素晴らしいことってないんじゃないか......。そんなことをしみじみ実感したりしているんですよ。