プレスコンサルティング(商業出版エージェント)-樺木宏さん

プレスコンサルティング(商業出版エージェント)-樺木宏さん

週末起業家・ビジネスパーソンの本を商業出版する支援

印刷会社勤務という本業の傍ら、自ら構築した人脈を出版エージェントという週末起業に活用しているのが、樺木宏さん。2010年春には、樺木さんの企画で週末起業フォーラム主催の出版企画コンテストが行われ、多数の応募がありました。今回は、週末起業家のビジネスをブランディングという側面から、商業出版という手段で支援している樺木さんを紹介します。
週末起業家成功事例

  • 樺木宏さん
  • 週末起業開業:2009年6月
  • 初期投資:0円
  • プレスコンサルティング
  • http://pressconsulting.jp/
週末起業を始めたきっかけを教えてください。
週末起業を始めたきっかけは、1990年代末から盛んに言われるようになった出版不況が原因です。私の仕事相手は出版社だったので、そのことをいつも肌で感じていました。出版市場の縮小は、すでに就職したときから始まっていて、年々、需要が先細りしていくなかで、自分のなかで起業に対する内圧が徐々に高まっていたのです。以前読んだ藤井孝一代表の『週末起業』(ちくま新書)にも大きな影響を受けました。

具体的に活動をスタートしたのはいつ頃ですか?
2009年の6月です。きっかけはある出版社で編集長を行っていた知人がフリーランスになったことでした。

その知人が持っている出版企画を出版社に提案するために、自分が構築していた出版業界のネットワークで手伝ったのです。提案代行、企画立案、仲介といろいろやりましたが、結果かなり通ったんですね。2009年半年間で15本通りましたね。世の中に自分が支援した企画が出るのはとてもうれしいですし、そういう手伝いができたので、事業化への自信になりました。なんといっても、自分の人脈スキルが他の人の成功に役に立つ、ということを確認できたことが、大きいですね。

そこで、2009年の夏ぐらいに週末起業フォーラムに入会して、12月末、週末起業フォーラムの認定コンサルタントの講座に出て、試験に応募して合格。出版エージェントとしてのコンサルティングのスキルも磨きました。

出版人脈は、どのように構築したのですか?
紹介です。たとえば、ある出版社の編集者が異動になれば、次の編集者を紹介してもらう、その編集者が退職したら、また次の編集者......と芋づる式にどんどん人脈が増えていき、現在では800名の出版関係者との人脈を構築することができました。

では、800名もの業界人となぜ、コンタクトを取ることができたのでしょうか。実は出版業界というのは、人材の移動が多いわりに業界規模が狭いので、多くの人と知り合える機会が多いのです。いつの間にか、編集者の異動に関する情報通になっていました。たとえば編集者から「先輩の○○さんは、どこに行ったのか?」といった質問を受ければ、「その方は、現在、○○出版社で○○の部署にいますよ」と答えることができるようになっていたのです。そして、「今度、飲みたいな」という依頼があれば、飲み会をセッティングしたりしていました。また、ビジネス本の著者の出版記念パーティみたいなものがあれば、積極的に出席して、コツコツと出版人脈を増やしていきました。そうした結果が実って、現在、大手出版社などを始め、総勢35社の出版社に企画書を提案できるネットワークを構築することができました。

出版プロデューサーという仕事は、一般的に競合他社が多いといわれていますが、どのような点で差別化をしているのですか?
多くの出版プロデューサーは、すでに何冊か出版している人物の出版を請け負うことが多いのですが、私の場合は、新人発掘に特化しております。いろいろな出版社を回って話を聞いたところ、今後は新人発掘に注力したいというニーズが高まっていると感じられたので、新人発掘に重きを置いています。出版社には常に新人発掘のニーズがありますし、今後総出版点数が絞られていく可能性が高いなか、著者の強みを引き出す能力を磨き、差別化していきたいと思います。

企画提案についても編集者、ライター、デザイナーの制作ネットワークを活用した付加価値を入れたいと考えています。たとえば、書籍の表紙を企画書に合わせて、事前に作成して提案することで、編集者が他の企画書と比べて、売れる本であるというイメージが沸きやすいようにします。ビジュアル要素があるかないかでも企画の通過率というのは大きく変わってくるのです。

2010年の春に出版企画コンテストを週末起業フォーラムで開催されたと聞きました。
はい。週末起業フォーラムさん主催で、出版企画コンテストを行いました。50名に上る企画のエントリーがあり、その中の12名の企画に対して出版社から出版したいというオファーをいただき、現在、出版社と打ち合わせをしたり、執筆をスタートされたりしている方もいます。その一方で反省点もいくつかありました。出版企画書の提出を作成するのにかなり苦労された方が多かったということです。

出版企画コンテストへのエントリーは、50名になりましたが、実際に企画書を出された方は30名弱と減ってしまいました。事前にセミナーも行い、個別に全員の企画書を講評、ブラッシュアップを何度も行ったのですが、途中で詰まってしまう人もいました。でも今回、企画提出者の約半数は出版社の一次選考を通過し、何人も著者デビューしているわけですから、より積極的な支援をすることで、さらに企画通過率が向上すると考えています。そこで、9月30日に同じく週末起業フォーラムが主催する第2回出版企画コンテストでは、個別指導が行える出版企画塾を平行して開催する予定です。

表紙の制作は自分で行うのですか?
いいえ。プロの現役ブックデザイナーやライター、編集者などフリーランスで働いている方、編集プロダクションとのお付き合いがあり、そうした方と仕事をシェアすることで、提供するサービスの質を向上させています。

企画のビジュアル要素としての表紙の提案も、デザイナーとの話し合いのなかで生み出されたものです。

私はデザイナーやライターなどクリエイターの方と積極的に接点を持つようにしてきたので、そのお付き合いが現在提供するサービスの質の向上につながっています。

今までの出版実績を教えてください
週末起業フォーラム主催の出版企画コンテストを通じた作品は、まだないのですが、「情熱大陸」にも出演されていた、水中写真家の内山りゅう氏の『水に棲むものたちの物語』(バジリコ出版)、フジテレビのテレビプロデューサーの村瀬健氏の『一瞬で人を引き付ける話し方』(マガジンハウス)、長寿姉妹として有名な成田きんさんの個人トレーナーであった久野信彦氏の高齢者筋肉トレーニングの本『老筋力』(祥伝社)などがあります。

初期投資はどのくらいですか?
事業を始めるための初期投資は、ゼロです。しかし、ビジネス本を購入したり、セミナーに出席したり、出版記念パーティに参加したりという自己投資は、かなり掛けています。具体的な金額は挙げることはできませんが、毎年年収の10分の1は、自己投資として自分に投じています。本業の営業と重なる部分も大きく、投資効率はかなり高かったと考えています。

週末起業の作業時間はどんな時間を活用しているのですか?
早朝や通勤時間です。ITジャーナリストの佐々木俊尚さんの『仕事をするのにオフィスはいらない』(光文社)に影響を受けて、そうしたスキマ時間を活用するのをルーティン化したり、インプット作業とアウトプット作業を分けて行って作業をさらに効率化させています。そのための活用ITツールとして、インプットはGoogleの各種サービスEvernote、アウトプットはマインドマップとプレゼンテーションソフトなどを活用しています。特にGmailにてメルマガを振り分けつつ購読することと、GoogleReaderでブログのRSSフィードをチェックすることは、本から情報を得るのに近いくらいの有益な情報が得られますし、しかも無料ですのでお勧めです。その中で将来引用したい、また読みたい情報だけをEvernoteに転送しています。それらの情報と本・セミナーから得た知識を参考に、セミナーや教材作成など、各種アウトプットしています。

最後に書籍出版を目指す週末起業家にアドバイスをください
自分の考えた企画がつまらないのではないかとか、出版する価値がないのではないかと考えずに、とりあえず企画書という目に見える形で考えをまとめることだと思います。私は現在35社に企画提案をすることができますが、出版社が35社あれば、35通りの判断の基準があるので、思い悩まずにまず出すことだと思います。実績がなくても担当編集者のツボに入れば、企画は十分通るものなのです。ぜひ頑張って企画書をつくってみてください。