週末たいやき屋(飲食店経営)-長島大介さん

週末たいやき屋(飲食店経営)-長島大介さん

セカンドチャレンジは人に喜ばれるビジネスで起業

日々、ルーティンワークに従事せざるを得ない、ビジネスパーソンたち。自分の人生の意味を問うべく、週末起業に従事する方も少なくありません。今回は、自分の生き方の集大成が週末起業になったという方をご紹介したいと思います。今回、ご紹介するのはたいやきの夢の代表である長島大介さん。まずは、週末起業に至った経緯からお伺いしました。

なぜ、週末起業でたいやき屋さんを始めたのですか? 経緯を教えていただけますか?
ひと言でいうと自分の生きた証を世の中に残したかったという意識が強かった、ということでしょうね。日々、毎日が仕事で明け暮れているビジネスパーソンであれば、誰もが三十代に差し掛かると、自分の生き方はこれで良かったんだろうかと考えますよね。

ちょうどそのとき思いついたのが、人の想像を超える大きなたいやきがあれば面白いなと思ったのがきっかけですね。とてつもなく大きければ、人の話題をさらうこともできるし、人の好奇心も煽ることができる。さらに、それを食べたお客さんから喜びの笑顔をいただけるかもしれない。そういう思いつきで始めたのが週末たいやき屋を始めるきっかけです(笑)。

でも、普通のビジネスパーソンから異業種のたいやき屋さんをやろうというのは、いくら週末起業でも大変だったのではありませんか?
実は私は群馬県の出身で、今回二回目の上京になるのです。一回目は、二十代そこそこで上京して建築業を行っていたんです。それこそ、二十代にしては結構いい収入を得ていたんですが、そこで思ったのが人生お金ではないということです。

そこで、二十代の自分でしかやれないことは何かを一生懸命探し、行き着いたのが、ボクシングだったんですね。一応、プロとしてリングに上がって辞めたんですが、それで自分を完全燃焼できなかった。どうしてもあきらめきれずに2002年、一大決心をして二度目の上京をするのです。

なるほど。それでたいやき屋を始めた、と。
いいえ。やはり、こちらに来て知り合いもいないので、まずは人脈作りとブログを始めたんです。テーマは私の二度目の上京に合わせて「セカンドチャレンジ」(敗者復活戦)としました。そうすると、不思議なことに私を応援してくれる人が面白いように集まってきたんですね。

2005年ぐらいから、すでにたいやき屋をやろうと思っていたんですけれども、自分の築いた人脈やブログを使って徐々に週末たいやき屋さんを始める準備をしていったのです。なかでもブログを始めとしたITツールはたいやき屋さんという、普通の仕事ではなかなかノウハウがわからない業種の専門知識を吸収するのに非常に役立ちました。

たとえば、たいやきの中に入っているアンコひとつ取ってもそうです。一介のビジネスマンには、どんな小豆や砂糖を使えばいいのか、そしてその配合はどうするのかといったことがまったくわからないのです。そこで私は日本でも有名な和菓子職人さんのブログへ訪問してだめもとで教えてもらいました。自分の熱い夢を語り、「どうしても日本一のたいやきをつくりたい」という思いを話したら、一度も会ったことがないのに快く教えていただけました。

これも私がブログで自分の性格、考えていることを事前に紹介していたから怪しまれずに済んだということ。そして、文章で自分の考えていることをきちんと話せば、自分の考え方に共感して協力してくれる人がいることがわかりました。職人でもない人間にこれだけのノウハウを教えてくれるのなんて、なんて幸せなんだろうと思いました。

もちろん、一般的なたいやきのつくり方については、インターネットで勉強しました。もちろん有名なたいやき屋さんに何度も通って、舌と目で勉強しました。しかし、このようにネットの普及で一介のサラリーマンが一流の人から情報を吸収し、アウトプットができる時代になったんだなと実感しました。

週末たいやき屋さんを行う一週間のスケジュールはどのようになっているのですか?
膨らし粉以外すべて手作りにこだわっているために、仕込み時間が半端ではないところが難点です。たとえば、中身のアンコは小豆と砂糖を混ぜた上で、約七時間熟成することにしています。なので平日の火曜日、水曜日に帰宅後、仕込みを行っています。また、たいやきの中に白玉団子も入れているのですが、白玉づくりは金曜日の夜に行っています。意外かもしれませんが、たいやきは、たった1gの差で味がまったく変わってしまう、デリケートな食べ物なのです。ですから平日の仕事が終わったら、たいやきづくりに全精力を注いでいるという感じですね(笑)。

営業日は土曜日の10時30分から19時ぐらいまで東十条のコモディイイダ前で、昼休みなしで働いているので、ほぼ毎日週末起業に費やしているということになりますね。営業場所から自宅まで数キロぐらいの距離なのですが、機材をすべてリヤカーで運んでいますので、土曜日は朝と晩、引越しをしている感覚。なかなかハードな週末起業ですが、やりがいはあります。

焼き方にもこだわっているんですよね。
そうです。昔ながらの一丁焼きという方法でたいやきを焼いています。一匹ずつ丁寧に焼くために非常に時間が掛かるのですが、薄皮でパリッと焼けるのが特長なんです。それだけアンコを多く皮のなかに入れることができますから、頭から尻尾の先までギッシリあんを詰めることができるんです。さらに一丁焼きですと、出来立てのアツアツだけでなく、冷めても美味しくなるというメリットがあるのです。

ただ、難点を言えば、先ほど言ったように一度にたくさん焼けないということと一個当たり約二キロある焼型なので、焼くのに手間がかかるとういうこと。でも、お客さんの笑顔を見るとそんな苦労も吹き飛んでしまいますね。

一日にどのくらいの数が出るのですか?
一日にだいたい150個ぐらい焼くんです。小麦粉を使ったたいやきや抹茶を使ったたいやき、日本一大きいたいやき「たいやきのゆめ」は、限定で5個。ですので、日に3万円が売上になります。

今後の展開について教えてください
「大きいたいやき」ってどんなのだろう、というドキドキ、ワクワク感を世界中に広めていきたいですね。たいやき屋さんの道具を買いに浅草に行ったとき、私が想像を超えた大きなたいやきをつくりたいとスタッフの人に話したところ、目をキラキラさせて喜んでくれた。そういう人をどんどん増やしていきたいと思っています。

そのためには、いろいろな媒体に積極的に出て、世界中で私の仕事をわかってもらう必要がある、と思います。「TAIYAKI」が世界の人々に、くまなく広まって欲しいと願っています。